デザインは、ちゃちゃっと作れるのか(直せるのか)?
「そのデザイン。ちゃちゃっと、作ってよ(直してよ)」
そのように、お伝えいただくことがあります。
「ちゃちゃっと」というと、簡単に作業が完結するような印象を持ちます。
ですが、ここでちょっと待った!
プロのお仕事はそう甘くはありません。
筆者、他所様との打ち合わせでお話を聞くと「今まで知らなかったけど、こんなに大変な工程があったんだなぁ」と思うことがあります。
デザインも同様に、あります。
一見簡単そうに見えるデザインでも、流れるような視線の導線を確保したり、より見やすく伝わりやすくするための細やかな調整を繰り返したり、色の細部に気を配ったりと、あれこれと論理的な技術が詰め込まれています。
こうした細やかな技術は、長年の実務で培われています。
また無駄を削ぎ落とすことで、簡易的(シンプル)に見えていきます。
シンプルでも、研磨されています。
引き算で成り立つ“美”というものがあります。
(分かりやすい例では企業ロゴなんかは、シンプルですが格好良いですよね)
そして研磨作業は、骨が折れます。
集中力がいる上に、時間がかかります。
ここで、どんなところが簡単そうだととられそうか、ご依頼者目線ではなく製作者目線になってしまいますが、いくつか整理してみました。
思考の時間
どんなデザインにしようか?と、うんうん悩んでいます。
デザインが思いつかないときは、みるみる日数が経ちます。
アイデアを生み出す苦労と、形にするまでの労力と、ブラッシュアップのための手間暇があります。
製作者の頭はヘトヘトですが、手を動かしていない時間は遊んでいるように思われるかもしれませんね。
長時間労働
時間に関しましては、デザインを提出したとします。
なかには「こんな早く出来るんじゃん!簡単に直せるんだね」なんて思われている方もいるかもしれません。
ところが作業を分解していくと、徹夜して作業+翌日チェック&修正したりだとか、関係者とのやりとりがあったりだとか、印刷の手配をしたりだとか、事務処理をしたりだとか、他の予定とバッティングしないようにスケジュールの調整を考えたりとか、打ち合わせの準備したりとか、色々とやることはあります。
もし翌日にデザインの修正案を提出したとすると、わずか1日で仕上がったように感じます。
ですが現実は、徹夜+翌日チェック+修正となれば1日は2日であって、会社員の8時間勤務よりも長い1日となりかねません。
一見簡易に見えても、色々とやることがあったり、時間がかかったりしているんですね。
見本の提出時
方向性の確認ということで、いったん経過報告をすることがあります。
そのときの提出までのスピードが早いと、簡単に作れるんだなと思われてしまうのかもしれません。
しかし、経過報告はあくまでサンプル。
そこからの作り込みが本番で、時間がかかって大変なところです。
(デザイナーさんによっては、ガッツリ作り込んだ完成系を提出した方が良いとのご意見もありますが、筆者は模索中です)
技術と速度の反比例
経験を積むと制作スピードは上がります。
スピードアップでデザインの提出も早くなるので、簡単に見えるのかもしれません。
うまい、やすい、はやい。
という言葉がありますが「早い+安い」と意識が連動して、結果「美味い(知識・技術・経験)≒安い」と、捉えられているのでは?と考えています。
(圧倒的なデザインで驚きを与えられれば、別かもしれません)
これには他にも該当しそうな業界はありそうだな、なんて思います。
まとめ
- 制作全体の工数は高い
- 簡単そうに見えるけど、技術が詰まってる
- デザインを研磨すると、簡易に見えてくる
というところでしょうか。
以上、2024年時のいちデザイナーの感想でした。